ずっと黙っている俺に見向きもせずに、麻里子は元の道を歩き出した。




「……待てよ」



俺は麻里子に冷たく言い放った。




「何勝手にさよならしてんだよ。俺の返事も聞けよ」




麻里子の母親は昔から病弱だった。




でも、とある日彼女は流行り病に侵されて寝る状態が続いた。




麻里子の父親は、麻里子が小さい頃に女をつくって逃げた。




そんな麻里子は唯一の親である母親を大切に思っていた。誰よりも。




「私は、別に返事なんか聞かなくてもわかるもん。だって幼なじみだったんだよ…?」




振り返った麻里子の目は赤く腫れていた。