頑張れ、佐藤。



俺らはここからエールを送っているから。



「あーくそかっこわりぃ」



上を見上げても、下に目線を動かしても、やっぱり目からは涙が落ちていく。



『…高林、こんな場で聞くことでもないと思いますが、あなたの下のお名前はなんでしょうか?』



言っていたとはいえ、本当に場違いな質問に俺は笑ってしまった。



これがお紀の慰め方なんだ。



俺は立ち上がって体をのばした。



「いつかわかるよ。きっと…」



俺の失恋を慰めるように風は吹き、俺の新しい恋を祈るように桜の花びらは散り舞っていた。



「さーて、俺らもあいつらの様子を見に行こう」



俺は座っているお紀の手を引き、家へと向かって歩き出した。