『では高林とお呼び致します』



俺はお紀と一緒に、千年桜の木の根元付近に腰を下ろした。



『まやを、想い人を、ライバルに渡したようなものですのよ?それで良いんですか?』



ヒラリと袖を揺らすと、桜の花びらも踊るように舞い出した。




「いいんだよ。俺は自分の幸せよりも佐藤の幸せを願ってる。
まあ、あいつが佐藤を泣かせたら奪いに行くけどな」


俺の答えを聞いたお紀は、更に泣きそうな顔に変わる。



『ある……、高林もまやと一緒ではありませんか』



「俺はいいんだよ。何年も、何度もあいつの大事なものを傷つけてきた。
だから、あいつの気持ちまで傷つけたくないんだ」



小さい頃から我慢してきて。



彼女の両親も、彼女に出来ると口癖で育ててきた。



彼女はその両親の期待に応えようと、影で努力を重ねてきた。



誰にも気づかれず、褒められることなく、彼女は育った。



勉強以外だが。