突然始まった、佐伯さんの話に戸惑う。
昨日は彼を受け入れることができなかった。
「ねえ、もったいつけてないで教えなさいよ。デートは楽しかったの?どこに連れていってもらったのよ。あんなにお洒落して嬉しそうにお化粧を直していたじゃない」
「あ、うん…。そうね。だけどただ、食事して帰っただけよ。別に珍しいことなんてなかったわ」
できればこの話題は避けたい。思い出すのは彼の傷付いた笑顔だけ。
今日もどんな顔で会えばいいのか正直分からないくらいなのに。
「もう、お堅いんだから。もっとのろけてもいいのよー。いくらでも聞いてあげるのに」
萌にそう言われても、力なく笑うのが精一杯。
「じゃあ私、もう部署に行くわ。萌もそろそろ行かないと朝礼が始まるわよ」


