だけど、そんな気持ちが私にあることを拓哉に伝える訳にはいかない。
私には佐伯さんがいるのだから。
もう、拓哉のことは考えないと決めていたから。

拓哉を好きになって溺れてしまうと、息ができないほどに苦しくなる。
そんなあなたとの別れは、私に深い傷を残したまま、未だ癒されてはいない。

「そうなんですよ。佐伯課長とうまくやっているのでできたら邪魔はされたくないです。彼に誤解されたくないので、会社では過去のことは内緒にしてください」

私は平静を装って彼の目を真っ直ぐに見つめた。

「そうか。…よかったな、幸せそうでさ。分かってるよ。誰にも言わないから安心して」

そう言って笑う彼を見て心が締め付けられた。

……今からでも、間に合うのだろうか。
拓哉の隣にいる彼女と、私のそばにいる佐伯さん。二人を裏切ることになっても、許されるの？

拓哉はどう思っているのか。
突然、彼に尋ねたくなった。
拓哉がもしも、私を受け入れてくれるなら。
そしたらどうなるのか。