「まず、俺が考えていることはプロジェクトに携わる人員を増やしてもらうこと。初期だからといって、ふたりで進めるのは大変だからね。まあ、新部署ができれば人はおのずと増えるけどね」

私だけでは頼りにならないという意味だろうか。……まあ、否定はしないが。
そう思い俯く。だが、彼は意外なことを言いだした。


「そうなれば、君の負担率もかなり減る。このままだと、君にデートの時間もあげられなくなってしまうから」

「えっ」

彼の言葉に過剰反応して、私はガバッと顔を上げた。

「いや、…さっき…なんとなく気付いてしまって。佐伯課長と付き合ってるんだろ?」

「そんなことな……」

言いかけてはっとする。
何を言うつもりよ。
私は今、否定しようとした?

「……そもそも俺の出る幕なんてなかったってことだよな。バカだな、そんなことを考えもしないで、咄嗟に偶然出会えた芹香とやり直そうだなんて考えてさ。君を見た瞬間……一瞬であの頃の気持ちに引き戻されてしまって。君は……そうではなかった?」


「私は……別に。……もう、佐伯さんがいるから」

「そうか。……そうだよな。普通に考えたら、俺のことなんか忘れているよな。何年も前のことだから」

「はい。……忘れていました」


そんなのは嘘。忘れた日なんて一日もない。
ずっと恋しくて堪らなかった。会いたくて、触れたくて、抱きしめてほしくて。

あなたのことばかり考えていた。
あなたを忘れるために、別の誰かを好きになろうと努力してきた。
けれど、結局こうして再びあなたを見つめて動けなくなっている。