あなたの 囁きを聞きながら、その温かい胸に頬を寄せて眠る。
こんな夜がこれからも続いていくのならば、もう怖いものなんかない。
身も心もとろけるほどに愛されながら、あなただけを見つめていく。

憧れていただけの人が、想いを返してくれる奇跡が夢のように感じる。

「芹香……?寝たの?……おやすみ」
優しい声と、唇に感じるキスの感触。
意識が朦朧としてくる。

そんな中一瞬、頭の中をよぎる光景。
カフェのカウンターの中に、私と拓哉が立っている。

『俺さ。芹香と付き合うようになってから、いろんなことを考えるようになったんだよね』

カップを拭きながら拓哉は話す。

『どんなこと?』

私は洗い物をする手を止めて彼を見上げた。

『俺がもっと、しっかりしないといけないなとか』

『どうして?』

彼は首を横に向けて私を見下ろした。

『多分、明日は今日よりももっと好きになってる。芹香を守れる男になっていかないとな』