「……ね、芹香。こっち向いて」

言われるがままに彼に目を向ける。

「可愛い。……俺から目を逸らさないで」

唇がそっと重ねられ、目を閉じる。
今夜の拓哉は彼の宣言通り、どこか情熱的に感じる。
ベッドで抱き合ったあとの余韻が、ふたりを甘く包んでいた。

唇が離れて見つめ合う。
目の前に揺れる、澄んだ瞳。この輝きに心を囚われ、必死で手を伸ばし続けた日々は、もう終わった。

「今でも……時々思うの。明日には、拓哉がいなくなってるのかもしれないって。だけど次の日も、こうしてあなたに触れることができる。夢だったのは、離れていた時間のほうだったのかもね」

彼は微かに笑いながら、私の髪を撫でる。

「俺はもういなくならないよ。これからは、芹香が呆れるほどに、好きだと言い続ける。離れてしまったら、こうして君を感じられないから」

引き合う磁石のようにあなたと再会し、こうして愛を伝え合う。こんな奇跡が訪れることを、辛い日々に想像なんかできなかった。