「あ、ちょうどよかった。先に君たちに紹介しておくよ。今日から企画課配属の主任、星野くんだ」
佐伯さんに紹介された彼が、軽く会釈をしてから一歩前に出て佐伯さんと並ぶ。
「星野拓哉です。よろしくお願いします」
「たった今、皆で噂してましたー!よろしくお願いします!」
「よろしくお願いしまーす」
皆は頬を赤らめて口々に言う。
「ははっ。女性の噂は光の速さ並のスピードだね。星野くんは本社からの異動なんだよ」
佐伯さんは笑いを堪えるように拳を口に軽く当てた。
皆が笑う中で、私だけは動きを止め、硬直したままで彼を見つめていた。
そんな。
どうして。
頭が追いつかない。


