甘いだけの恋なら自分でどうにかしている


お店の前に着いて、ふっと息を吐いた。
一人で飲みに来た淋しい奴と思われるかな。
ここまで来て往生際の悪い不安が顔を出す。

課長、誘ってみたら良かったかな。
「嫌だよ」と露骨に嫌がる課長の顔が思い浮かび頬を緩ませた。
淋しい奴と思われたくないとか理由を言ったら見栄を張るなとか身の丈にあったことが現実に起こるだけだとか言われそうだ。
そう浮かぶと自然と背中を押されたような気になる。
課長は私の中でどんな存在なんだ。やっぱり恋愛のスペシャリストで指南役かとまた笑いたくなった。

そうだ、私は一人で来た淋しい奴なんだと腹を決めてドアを開けた。
自分を良く見せること自体に無理があった。
カウンターの向こうに綾仁くんの姿が見える。
あ、行くよとか言わないで来ちゃった。
私に気がつくと、優しい微笑みを向けた。