「そうですね。課長、言葉遣い悪くても意味もないことは伝えませんからね」
「うん。そうだよね。まあ、変なミスばかりして突っ込まれるから、そろそろ愛想つかされるかも」
と言うと
「それはないですよ。だって課長が小千谷さんを営業に戻したんじゃないですか」
「……え? そうなの?」
「そうですよ」
「なんで知ってるの?」
「だって、私が訊きましたから。課長に」
「はっ?」と目を丸くした。
「だって、あんな理不尽な人事ありませんよ。だから、課長にそれとなく小千谷さん、営業の成績良かったんですけど戻れないんですかね? って訊いたんです。そしたら、もうそれは考えてあるって言ってて、それで今回の異動が決まったんですよ」
若槻がいう理不尽な人事とは、八嶋課長が異動してくる前の話になる。
父が余命先刻を受けて、最期まで家で過ごしたいという父の願いを叶えたいと思った矢先、当時の部長から札幌支社の異動が告げられた。
残されたわずかな時間を父と過ごしたかった私は、それを断った。
それが部長の怒りに触れたらしく、当時営業部の主任だった私は降格、同じ営業所の事務に異動となった。
「使えない頑固じじいのくせに」と若槻はモラハラだ、会社のコンプライアンスの部署に相談しませんか? と提案してくれたけど、それも面倒くさいし残業が少なくなったのはありがたかった。
お正月を過ぎて数日、父は家で他界した。
ちゃんと看取ることが出来たのも、そういう協力があったからこそだなと今となっては思っているし感謝している。



