私がグラスに口をつけると課長は、
「しかし、あれだな。お前、感謝しろよ。あの男に」
「はっ?」
「お前みたいな奴を女性として扱ってくれるんだからな」
しみじみ答える。
「はっ? 課長、傷心の私になんてことを」
「俺から見たら、あっちが被害者のようだったけどな」
「……」
「まあ恋愛に被害者も加害者もないか。でも初めは好きだったんだろ。相手が急に変わって受け入れられなくなったなんて一方的に向こうのせいにしてたら何も変わんねーぞ。
向こうが変わった理由が自分の中にあること自覚して離れないと次の恋愛も同じだろ」
「課長は恋愛のスペシャリストですか」
「何言ってんだ」
呆れながら、
「周り見たらわかるだろ。同じようなタイプの恋愛してる奴とかいるだろ。本人が成長してないから、周りも変わらないんだよ。
同じ事繰り返す原因は自分の中にあるのに、周りのせいにしてるからだ」