「ふっ……あははは」
「そんなに笑うなよ」
「笑わせろよ。気が抜けたんだ」と脱力して、その場にしゃがみこみたくなる。
高安は穏やかな様子で「悪かったな。驚かせて」と謝った。
顔を見合わせて、なんだかおかしくてまた笑えた。
「じゃあ、顕人、帰って来たら絶対連絡寄こせよ。あと真唯子さん、こいつのことよろしくね。またな」と帰って行った。
スナックあけみから、下手くそな歌声が漏れ出してきて、ふと我に返る。
「何もなくて良かった」
「ごめんね。なんか勘違いさせたみたいで。話しかけられて、かけ直せなかったんだ」
「いや、俺も悪かった」
「あ、永史さん、顕をずっと待ってたんだよ」と急に腕を引っ張られると、足元が滑って尻餅をついた。
「ごめん! 大丈夫? 今の絶対痛いやつ……」と慌てて真唯子が屈みこむ。ここ凍ってたんだ、本当にごめんねと謝る。
そのまま抱き寄せると「もうどこにも行くな」と言っていた。
告げてから、何を言ってるんだろうと思った。そんなこと自分が言うとは思いもしなかった。本当に、真唯子といると、思いもよらないことを伝えたくなる。



