「なんなんだよ」
ザクザクと固くなった雪の表面を蹴って、走った。
国道から裏路地に入ると、小さな飲み屋が連なっている通りに出た。
短い距離とはいえ、息があがっていた。
薄明りの下、店の前に大柄な男の背中を見つけた。目をこらすと真唯子が奥にいるようだ。
しかし兄貴ではないし、こんなところに真唯子の知り合いがいるはずもないので、誰と話しているのだと気が立った。
「真唯子!」と呼びかけると男の肩越しから顔を出して見せた。その表情から恐怖は感じ取れない。傍まで辿り着くと、ほっとしながら抱き寄せた。
「走って来たの? 息、あがってる」と真唯子が不思議そうに言う。
男の方に顔を向けるとさっきまで飲み会にいた高安がそこにいた。
「高安?」
「顕人。どうした慌てて」ときょとんとする。
「電話してたら、こいつの叫び声が聞こえたから。スマホも繋がんねーし。なんだ、お前が変態だったのか」
「変態って。ちげーよ。歩いて帰ってたら、顕人の彼女を見つけてさ。後ろから声かけたら、叫ばれただけで」
言い訳してる高安にも慌てた自分自身にも笑いたくなった。



