甘いだけの恋なら自分でどうにかしている


「……じいさんか」
「うん。行きつけのお店があるから、一緒にどうかって誘われたの。あっ、あと永史さんもいるよー。代わろっか?」
二人ではないなら、セクハラはされてないかと安堵する。その辺は、兄貴がちゃんと守ってくれるだろう。とりあえず向かう事にした。
「代わらなくていい。今、近くにいるから、迎えに行く」
「え、何?」

こっちの声が聞き取りづらかったのか訊き返す。もう一度伝えるが、聞こえていないようだ。代わりに誰かの歌声がすると、耳元から喧騒が遠ざかっていくので、移動しているのかと少し待った。

「ごめん、ごめん、外に出た。おじいさんが、カラオケ歌い始めちゃったから聞こえなかったの」
「ああ、そうか。今、近くにいたから、迎えに行く」
「迎えに来てくれるの? ありがとう……え? ぎゃあっ!」と、小さな悲鳴が聞こえると通話が途切れた。
すぐにかけ直すが、電波がないとガイダンスがする。