Side-顕人-

「あとで、連絡するからな」と高安は急いでいるのか、番号を交換すると、そそくさと行ってしまった。

行きたいとも行きたくないとも思わなかったが、さすがに今日、真唯子を実家に連れてきて、明日不在にするのはどうだろう。

車に乗り込むと「小学校の集まりか。楽しそうだね」と真唯子は屈託なく笑った。
「ああ。行かないけどな」
「えー、行って来たらいいじゃん。すごい久しぶりなんでしょ? 高安さんって人、すごい顕と話したそうにしてたよ。顕のこと好きなんだね」
「……夜、一人になるだろ、お前が」
「一人じゃないし、私は実家でゆっくりさせてもらうから、行ってきたら?
あ、そうそう福島のお土産で写楽って日本酒いただいて、持ってきたの。
お父さん、日本酒好きって言ってたよね? お酒付き合ってくれるかな?」
と、花が咲いたように笑うので、真唯子に対して自分が過小評価していたことに気がついて肩の力が抜けた。

「真唯子は、本当にどこでも生きていけるな」
「え? どういうこと? お酒があれば生きていけるって事? あながち間違ってないけど」と見当違いなことを言うので、笑ってしまった。