トイレから出て、雑誌コーナーにいた顕の元へ行こうとすると「まじで? 顕人じゃん」と大柄の男性に声をかけられていた。

向こうは幻でも見たかのように驚きながらも、どこか感激しているようにも見えた。

「は?」と顕はしばらく黙って「誰だっけ?」と尋ねる。
「なんだよ。忘れんなよ。俺だよ。高安(タカヤス)! 薄情者ー。忘れてた。お前、そういう奴だよなー」
「……高安? ああ、なんだお前か」
「なんだはねーだろ、なんだは。ひっさしぶりだな、元気してたか」と顕の肩をバンバンと豪快に叩いて笑った。

友達なのかなと黙って見てると、顕が私に気がついて振り返った。
「真唯子」
「お友達?」
「ああ。小、中が一緒だった」と説明するので、「こんにちは」と会釈をした。

高安と呼ばれた彼は、私に挨拶をすると、嫁なのかと尋ねる。結婚してない事を伝えると、そうか彼女かと納得した様子だった。

「そういえば、明日の夜、久しぶりに小学校の奴らで集まるんだよな。顕人も来いよ」
「明日?」
「色々話したいしよ。あ、連絡先、教えろ」と強引に押し切られるように連絡先を交換していた。