気がつくと、課長の背中におぶされていた。

「社長」
「どう見ても課長だろ。お前は社長の背中に乗れる身分か」
「私、どうして部長の背中におんぶされてるんでしたっけ」
「部長じゃねーぞ。お前、次、それ言ったら、はったおす」
「はひ」
「やっと意識戻ったか。お前がカラオケで爆睡して起きねーから、方向が一緒の俺が送ってやってんだろう。タクシーの中でも爆睡しやがって」
「あはは。そうだったんですね。もう歩けます」
「お前さ、カラオケの入り口でまた足捻って痛がってたぞ、足。そんな感覚もねーのかよ」
「あっ……そっか。そうなんですね。言われてみると痛い気がします。あっ、そこ右です」

「鍵貸せ」
と受け取りエントランスから入っていく。302号室。
「入るぞ」
と、部屋に入るなり、私を床に雑に降ろした。

「ざ……雑ですね。課長」
「送っただけありがたく思えよ。明日病院行けよ」
と、帰ろうとする課長の腕を掴んだ。

「……ああっ、課長!」
「なんだよ」
「ケーキ、食べてなかった」
「はっ?」
「若槻から誕生日のケーキもらったんですよ。一緒に食べませんか?」
「誕生日って今日か?」
「はいっ」
「……んじゃひとりで食えよ」