本当は伝えるつもりなどなかったのだけど
「……顕が、知った風な事を思うもんだよなって言うから。
私、二人のこと何も知らないのに、一人で色々考えて決めつけて顕のこと守ろうとして……でも、その考えはたぶん間違えてて……なんかバカだったなって思っただけで。勝手に一人で。だから、全部、自分のせいで」
勘違いさせたわけでもないと言いたかったのだけど、言葉に詰まる。
「知った風な事? ああ、あれは……悪い。独り言だったな。
真唯子の事を言ったわけじゃなくて、俺も、天野も若槻も関口もみんなそうだという意味で、言っただけだ。
あんな話、聞かされても知った風な事しか思えないなってな。
若槻なら、自分のせいだって言って、天野ならあいつは夢見がちなとこあったからやりそうだよなって言うような、そんな事だよ」
静かに言う。私は、さっき聞かせてもらえなかった答えを確かめるようにまた尋ねていた。
「顕は? 顕は何を思ったの?」
「………」
「………」
「……バカだなって思ったよ」
「………」
「気づかなかった俺も、嘘を吐いた萌花も。みんな。こういう事は、本当にお互い様だな」
誰が悪いとか正しいとか、そんなことはどうでもいいというような潔い答えだった。



