慰めるにしては、大袈裟だなと彼の腕をほどこうとしたのだけど、抱きしめる力が増すので「どうしたの?」と笑って問いかけた。
「ほっとけないんです」
「え?」
「なんか今日の真唯子さん、ほっとけないんです」
本当にほっとけないって、どんな感情なんだろう。そんな言葉を、まさか自分が言われるなんて思わなかった。
少しだけ顔を上げると、肩越しに道路を横切る三毛猫が見えた。一度足を止めて、私を一瞥するとビルの隙間に消えて行った。
やっぱり、あの猫に懐かれたら、私もほっておけなくて、家に招き入れてしまうかもしれない。そんな感情なのかな。
でもあの猫ならきっと、ほっておかれても平気だろう。たくましく生きていく様が想像できた。
ぼんやり、そんなことを思って
「案外、ほっといても平気なものだよ」
と答えた。



