「でも平行線になりそうな話だし。それに、我慢っていう程でもないから」
「でもそういう気持ちがあるって、ちゃんと言ったほうがいいと思いますよ。そういうのって、後で上手くいかなかったときに喧嘩の原因になりそうだし」
言いたいことはなんとなくわかった。もし私が顕の地元での生活に馴染めなかったときに、本当は行きたくなかった、いや、そんなこと聞いてないけどと言ったような喧嘩になるとでも言いたいのだろう。
喧嘩とか想像つかないけど、環境が変わればそうなることもあるのかな。
嫌だな。前の彼みたいな付き合い方になったら――。
そこまで考えて、天野先生に意識が過去にあるから、未来も縛られていると言われた事を思い出した。
確かに、そうだ。
「でも、決めたことだし。大丈夫、ありがとう。優しいね、綾仁くん」
笑うと、急に抱きしめられた。
ガシャンと自転車がアスファルトに倒れる音が響く。
「僕に、決めたことやめてもいいと思うって言ってくれたの真唯子さんですよ。不安なら、やめればいいだけです」
「……綾仁くん?」
すっぽり収まってしまった綾仁くんの腕の中、冷えた頬にモッズコート越しの彼の体温が伝わってくる。



