一瞬の沈黙の後、
「で、真唯子もそれを知ってたんだな」
と不意打ちで尋ねられ、ビクリと肩が持ち上がった。
「ごめんね。天野先生に偶然会ったときに聞かされて。なんか顕に言っていいかわからなくて、黙ってた」
「……そうか」
「そうそう。小千谷ちゃん、ひどい剣幕だったんだから。そんな嘘吐いて別れるなんてひどい、そんなの愛じゃないって。もう、怖かったよ、俺」
天野先生は顕があまり気にしていない様子に安堵したのか、調子に乗って茶化すので、「天野先生!」と阻止する。
この勢いで、何を言われるかわかったものじゃない。
顕は、ふっと私の方を見る。「知った風な事を思うもんだよな」とぽつりと言うので、身体が一瞬で熱くなった。
それはまるで自分が萌花さんと顕の事を何もわかっていないくせに、決めつけてるとでも言われたようで、恥ずかしくなる。
いたたまれなくなってグラスを引き寄せると、沈む氷が溺れて見えた。



