「そうか」と顕は呟いて、グラスに手をかけた。
それから天野先生の方を見て
「随分、面倒くさい役回りさせられたな。会ったとき、その事、言えば良かっただろ」
「別にお前に嫌われる事くらい、大したことじゃない」
「それはそうだな。もともと好きじゃないし」
「……知ってる。本当、お前、昔から性格悪いよな」
「正直なだけだろ」
あんな話を聞いた後だと言うのに、言い合う内容が互いの性格についてで、張っていた気が少し緩んだ。
だけど、冗談のような掛け合いに笑っていいのかわからず、ぼんやり眺めていると若槻の膝に乗せていた手が小さく震えていることに気づいた。
「大丈夫? 寒い?」
声をかけると首を振り
「大丈夫です。ちょっとお手洗いに行ってきます」と奥へ向かって行った。



