聞かれた? 聞かれてない?
偶然、会っただけですと言いたいところだけど、何から言い訳していいかわからない。
「よし」と天野先生は呟くと
「久しぶり」と何でもない顔で顕に声をかけて、
「お前もこの店たまに来るって聞いてたけど、会えるとは思わなかったな。時間があったら一緒に飲みたいところだけど、俺、今から帰るところなんだよ。今度時間あったら、飲もうぜ」
とかっこよく立ち去ろうとするけど、その肩を思い切り顕に掴まれ、引き留められた。
天野先生の抵抗も虚しく、結局、空いていたカウンターに若槻と、私、顕、天野先生の順に並んで座る。さっきまで愛らしさを感じさせた若槻の顔は少し強張っているように見えた。
「ののちゃん、久しぶりだね」と華さんが声をかけると少しほころぶ。
「うん。SNSで華ちゃんがここでお店やってるって知って。前にも一度来たことあったお店だから、すごい驚いちゃった」
「前にも来てくれてたんだ。ありがと。あ、何、飲む?」
と頷いてオーダーをとる。



