「じゃあ、小千谷ちゃんも、結婚するのか。おめでとう」
カウンターの奥でグラスを取り出そうとしていた綾仁くんも振り返り
「結婚するんですか?」
うんと言おうと思ったのだけど
「……あれ? プロポーズは……されてないな」

いや、着いてくるかと尋ねられて、着いて行くと答えたから、あれがプロポーズだったりするのかな?
結婚を前提に的な流れではあった気がするけど、ちゃんとした言葉は言われていなくて首を傾げる。

「え? プロポーズされてないのに、着いていくの?」と華さんに驚かれた。
綾仁くんも目を丸くする。

「まあ、はい、ええ」
そっかーと呟いてから
「なんか私の友達でさ、いずれ結婚するからって言って付き合ってた彼の地元に着いて行ったんだけど、結局、彼のご家族とか田舎ならではの空気とか、色々トラブルあって別れて帰って来た子がいたな。なんかそれを思い出しちゃって」