「あははは。余計にお兄さんに会いたくなっちゃった」
元ヤンの愛らしいお兄さんを想像するだけで、ほっこりしてしまう。
「正直、結婚とかしないつもりでいたからな。誰かを大事にしたいとか、もう思えないと思ってたし。後腐れなく帰るつもりでいたけど、そうは行かなくなったからな」
「あっ、あーそっか」
自分のことを言われてると自覚すると、急に照れ臭くなり、棒読みで返事してしまう。

「だから、真唯子がどうしていきたいか、ちゃんと教えてほしい」

顕の口から思いを聞いて、改めて自分に尋ねる。
自分の思い描いていたパズルとは違うけどいいの?
でも今の仕事だって転勤が多いから、どっちにしろこの家に住み続けるのは無理だろう。
なら、同じ事だと言い聞かせながら違う案も浮かぶ。
彼のやりたいことと自分が手放したくないもの、どちらも満たせればいい。

「お店だすって、こっちでは出来ない事なのかな?」
「あー」と言い淀んでから、「なんとなくだけど、地元でやりたい感じがするんだ」
「あー、そっか、そうだよね。店舗も決まってるし、お兄さんも協力してくれるし、何より顕の地元だもんね」

ここを離れたくない気持ちは正直残っているけど、顕にとっての地元だって、そういうものなのかもしれない。