「空気みたいだね」
「空気?」
「ほら海で溺れたときとかって、パニックになるじゃん。海面から顔を出したときに空気を吸ったときの安心感ってすごいじゃん。そういう存在でいてくれるってことでしょ? だから顕は空気だね」
「顔を出した瞬間、沈めるかもな。うるさそうだから」
「えっ、ひどい。更に沈める気ですか。ていうか空気はそんなことしませんけど。ただのいじめっこじゃん」
軽く睨むと穏やかに
「空気は愛そのもの」
「え?」
「って、蕎麦屋のばあさんが言ってたな。確かに空気がないと生きられないしな」
昼間に出会ったおばあちゃんの言葉だと思い直して遅れて返事をする。
「そうだね。じゃあ、今、私達愛の中にいるんだね」
そう感じられたのなら、さっきまで考えていたゴチャゴチャした事もどうでもよくなってしまいそうだ。
視線を感じて顕を見ると、優しい眼差しを向けていた。
少しドギマギして
「な、何?」
「やっと自然な顔になったと思ってな」
飾り気のない表情に、素直に罪悪感を感じて
「ごめんなさい」と口を出た。



