30過ぎても、私は子供だ。
「顕は正直、若槻のこと、恋愛対象に見たことあった?」
「ないよ。それは、ない」
「わかった」
嘘じゃない気がして、息を着いた。
もうこれで終わりにしようと思って
「もういいよー」
と言ったら、苦笑が聞こえた。
「かくれんぼかよ」
「うん。早く見つけてください」
「バレバレだけどな」
「……あ、あとごめんね。なんか気持ちにやり場がなくてどうしたらいいかわからなくなった」
「まあ、俺が悪かったし」
うんと頷く。
「今だけじゃなくてさ、たまに自分の気持ちをどうしていいかわからなくなる。誰も責められないときとか。本当はずっともやもやしてるのに、それをどこに追いやっていいのか、追いやっても追いやっても、結局、また同じこと感じて、なんだか嫌になるなぁ」
部屋の中に光がゆっくり差し込み、広がっていく。
「見ーつけたとか言わねーぞ」
「今、言ったじゃん」
「言ってねーよ」
背中を丸めて座る私がどう見えたのかはわからないけど、顕は隣に胡坐をかくと
「ひとつ言っておくけど、俺は、こうして真唯子が落ちたときに守ることも支えることもできないだろうし、真唯子の中の感じる嫌なことなんて減らすこともできない。
掃除屋じゃねーし、そんな器じゃねーからな」
ひとつ間をおいてから、
「ただ真唯子が落ちた後に見た景色の中にも、俺はこうしている気がするよ」
その言葉になんだか気が抜けて「そっか」と小さく笑いが溢れた。



