車を停めて降りると、緩やかな細い坂の上に鳥居が見えた。
確かにこんな所、観光マップにも載らないだろう。
澄んだ空気を肌で感じながら歩いていくと、段々自分の身体が熱を持ってくる。

鳥居の先には、黄金色の絨毯が広がっていた。
時が止まったような静けさの中、風が吹いて私と顕の間を銀杏が踊るように通り抜けた。
「綺麗」
顕はコートのポケットに手を入れたまま空を見上げていた。
その様子が綺麗で眺めていたくなる。

視線を私に戻すと
「そうだな」
と白い息を吐いた。

空が高い。鳥の声が聞こえて、なんだか神聖な気持ちになり目をつむった。

「寝るなよ」
「寝ませんけど」

冗談を言う顕の後ろから腕を絡め、落ち葉を踏みしめて歩いた。

車に戻ると「なんかこのまま帰るのは勿体ねーな」と顕が言うので「私も」と返す。
「どこか泊まるか? そしたらゆっくりできるだろ」
「じゃあ、海の見える温泉がいいな」
私のリクエストで、なんとなく決めた宿もすぐに予約がとれた。

「私、当日に温泉の予約したの初めてかも」
「ああ、俺もだな」
「前もって決めてなくても、素敵なお店や場所に行けるものなんだねぇ」
感慨深くなり、独り言のように言ったのだけど、顕は
「確かに、計算して叶う事なんてたかが知れていることなのかもな」
と呟いた。