「で、今、どんな状況なの?」
「課長に色々対応してもらって、どうにかこうにか事なきを得たんすけど」
「……そっか」

大変なことになっていないようでほっとする。

「今日はもう帰っていいと言われたんすけど、大丈夫すかね。課長、たぶん自分のせいで仕事終わってないみたいで残ってるみたいでどうすればいいすか?」
「課長が帰れって言うなら、大丈夫なんじゃないかな? 実際、手伝えることあるかわかんないし」
「そっか。じゃあ、帰っていいんすかね。わかりました」
「大丈夫だよ。中村も心入れ替えてね」
「うう。ありがとうございます。じゃあ帰ります。お疲れ様です」

通話が終わってから、スマホを見つめてしまった。
課長に電話をしようかと思ったけど、今、どんな状況かわからないのでメッセージを送った。

『中村から、連絡ありました。今日、大変だったみたいですね。大丈夫ですか? 何か手伝えることはありますか?』

中村には帰れと言ったのに、送ったメッセージは矛盾している。
何か出来ることがあったらいいなと感じていて――というか、なんだか心が惹かれて仕方がないんだ。
今日だけじゃなく、ここのところ、ずっと。
他の人の会話の中でも課長を重ねて聞いてしまうだけで、ほっとしている自分がいて、それが少し嬉しくもある。