「どうでしょうね。私もわからないです。
わからないけど……顕人くん見てるとたまに切なくなるんです。
まだどこかで姉を思ってたりするのかなって、私が勝手に思っちゃってるからかな。
だから、顕人くんには幸せになってもらいたいです。
お姉ちゃんがダメにしちゃったから。
なので、変な噂を聞いたら一蹴してくださいね。お願いしますよ。特に加賀くんあたり噂好きだから見張ってて下さいね」
と冗談みたいに言うけど、本当にそう思っているのが伝わってきた。

「わかった。噂の発信者には釘さしておくね」
「あ、やっぱり加賀くんですか?」
「まあ想像を裏切らない感じかな。加賀くんが若槻に嫌われるようなことは言えないから忘れてあげて」

あ、と若槻は何かを思い出したようで
「そういう小千谷さんも課長と仲いいですよね。家にまで行く仲だとは知りませんでした。前まで課長に好かれてるとか言ったら嫌がってたから」
「あ、仲いいっていうか、なんか偶然が偶然を呼んで、家に行っただけで」
しどろもどろになると
「大丈夫ですよ。課長から聞きましたから。そういう関係じゃないって。家族みたいなもんだなって言うからちょっと笑っちゃいましたけど」

打ち解けすぎですと笑いながら言われ、胸に陰りを感じた。