「だから、あの日も……まあ姉のことなんですけど、思い出して泣いてしまって。
勢いで抱きついてしまったのを、ただなだめてくれただけで。
大体、私とお姉ちゃん、顔は似てるんですけど、性格は全然違うから、そういう対象に見られたこともないですからね」
サバサバ話す若槻に嘘は感じられなかった。
「課長は知ってるの? その、若槻のお姉さんが亡くなってるの」
「はい。姉が亡くなったことは、ここで再会したときに伝えました」
課長の家に行った日、ひとりで悲しくないかと尋ねられたことをふと思い出した。課長も別れたとはいえ、大切だと感じていた人を亡くしていたんだ。
課長の中には悲しさがあるのだろうか。
あるから、尋ねられた気がした。
「課長は……もしかして若槻のお姉さんのことまだ好きだったりするのかな?」
気がつけば聞いていた。若槻は首を振る。



