ここでは話せない大事な話ということで、仕事の後に飲もうとお店で待ち合わせをした。

飲み物を頼んでから
「大事な話って何?」
「実は」とテーブルに身を乗り出すが、「あー、やっぱどうしようかな」と悩みだす。
「二人誘っておいて、それはなしっすよ」
「あー、でもな。いいのかな、言って」
届いたビールを乾杯もせずにあおってから「言います」と宣言した。

「この前、俺、見てはいけないものを見てしまったんですよね」
「見てはいけないもの?」
「貞子? うちの会社出るんすか?」
「いや、貞子じゃねーし。いや幽霊みたいな類いだったら良かったのかな。ていうかその前にそれを見た為にひとつの仮説ができました。もしかして、若槻さんの婚約者って課長じゃないかって」
「……はぁ?」と思わず言ってしまうと、中村も笑いだした。