結局、他愛ないことを話していたらお昼前まで居座ってしまった。
ウェアも乾いたので着替え、厚手のパーカーだけ借りた。
送るかと言われたけど、首を振り断る。おいしいプリンのお店だけは口頭で教えてもらったので、帰りに確認しよう。
玄関まで送られ、ドアノブに手をかけると課長は思い出したように尋ねた。

「お前、野菜いる?」
「え? 野菜? おばあちゃん?」
「あだ名を増やすな。なんだか勝手にお前の家族にされてきた気がするな。実家から送られてきたんだよ。兄貴なんだけどな。無農薬で作っててうまいぞ」
「へえ……無農薬。ていうか課長って弟だったんですか?」
「そうだよ。そこ驚くか」
「なんか一匹狼臭がしたので」
「姉もいるけどな」
「まさかの末っ子?」
「まあ兄貴って言っても10は離れるからな。たぶん兄弟だけど親みたいな感じに見られてるとこもあるかもな」