甘いだけの恋なら自分でどうにかしている


「こう言ったらなんですけど。私、死んだ人のこと忘れていいと思ってるんです。だって、死んだ人のことを忘れないって引きずってたら、永遠に今を生きられないじゃないですか。
私が死んだ立場なら、私のことは秒で忘れてほしいです。だってもしかしたら死んだ私も秒でみんなのこと忘れるかもしれないし。なんかそう考えたら滑稽だなって。結局、住む世界が違うからわかりようもないけど、それでバイバイが一番いい。
ただこうしてふとした時に生きてる自分は母や父を感じられる。課長が言うように幸せなことですね」

プリンの蓋をゆっくり外した。

「……そういえば、あのときもそんなこと言ってたな、小千谷」
「あのとき?」
「お前の親父の葬儀」
「何か言いましたっけ?」

葬儀で課長と話した記憶がなかった。

「葬儀中、ずっと笑顔で接してるところ見てたよ。俺は、父親も母親も言っちゃえば祖父母も健在だ。だから家族の葬儀とか無縁だけど、家族を看取った後の葬儀を一人でやりきるのは大変だろうなとは想像はついた」
「……」
「若槻が何か困ったことあったら言ってくれとか、悲しいときは無理して笑うなとか、そういうことをお前に伝えたときにさ、今に心がある限り幸せだから大丈夫とかって言ったんだよな。
なんかそれがすごい印象に残ってた」
「……そんなこと言ったっけ」

まったく身に覚えがなかった。