課長は少しして、冷蔵庫を開けると「プリン食うか?」と言うので頷いた。
「課長、甘いの嫌いなはずでは」
「プリンはいいんだよ」と向き合って食べるのがおかしかった。
「課長のオムライス、母のに似てて。どことなくなんですけど」
さっき泣いた理由を課長は知りたいとも思ってもいないだろう。だけど、なんとなく伝えたくなった。
「へえ」
「食べたら、なんだか母への感謝が湧いてきて、涙が出てきてしまったんです」
「母への感謝か」
「はい。そしたら、嬉しくもなって、また泣けて」
「幸せそうだな」と課長は少し微笑んだので、また頷いた。
「お前、一人っ子なんだろう?」
「はい」
「悲しいとかないのか? 一人で」
課長の言おうとしていることはわかった。
母と父と住んでいたマンションに一人思い出と住むには広すぎるように見えるかもしれない。
だけど「今は、ないです」と即答した。
父が亡くなった直後には失望したこともあったけど、今はもう感謝で繋がっているようで悲しみはない。



