乾いた砂、泥、広大な敷地と、そこにあるのは無数の陰。
希望、絶望、喜び、屈辱、悲しみ、後悔…
弱き者は退き、強い者だけ生き残る。
ただ、そのスタート地点に立てずにいるものもいた。


晃樹もその一人だ。
なぜだろう、いつから自分はこんなになってしまったのだろう。いや、それがいつからなのかは明確だ。出来ることならやり直したい。


高校1年
晃樹は「西海(にしうみ)高校」に入学した。
西海高校はそこその名の知れた野球の名門校である。もちろん晃樹がその学校を選んだのもその野球部に入部するためだ。
西海高校は野球は強いものの、「優勝」というものがなく、ぱっとしないような学校のように聞こえる。しかし、その実力は去年のすべての県大会でベスト8以上には残っている。たいしたものだ、これだけ実力があって優勝できないのも逆に珍しい。