涙が頬を伝って、ゆっくりと。畳を濡らしている。




俵というのはお母さんの旧姓。名前は美佐枝。間違いない。




お母さんが私と同じ瀬花高校に通っていたなんて。




お母さんが短歌部の部長をしていたなんて。




お母さんが責任をとるために自主退学をしていたなんて。




私はお母さんのことを何も知らなかった。




短歌をこんなに愛していたなんてことも。




「万智ちゃん?」




カナ先輩が私を優しく抱いてくれる。私は泣かないように、泣かないように必死に涙を堪えようとした。笑顔で、おじさんにありがとうって言わなきゃ。




ダメだ。うまく笑えないや。