翌日、部室へ行くとサラダ先輩はいつものように煙草を吸っていて、「お疲れ」と言ってコーヒーを求めた。




私もいつものように二人分のコーヒーを淹れる。一つはサラダ先輩の机の上に置き、もう一つはガラスのテーブルに置き、それをソファーに座って、飲んだ。




短歌部の徒然なる日常だ。




前髪が伸びてきたように思う。少し切ろうかとも考えたけど、今月はお金が厳しい。これくらいなら自分で切ろうと思えば切れるかもしれないけど、失敗した時のことを考えると、勇気が出ない。




「サラダ先輩」




「なんだい?」




「サラダ先輩の髪ってどこで切ってますか?」




「家だけど?」




さらっと返ってきた。




「家? 自分で切るんですか?」




「そうだよ。自分の髪だからねえ」




変わっているとは思ったけど、よくよく考えればサラダ先輩の考えが常識なのかもしれない。




自分の髪の毛なのに、それを他人に触らせて切らせるというのがこの世界の常識になっているけど、『自分の身体の一部を初めて会う他人に触らせる』と言い換えれば、サラダ先輩の非常識も理解ができる気がする。




でも、それならサラダ先輩は、怪我をしても、病気になっても自分で治すということになる。自分の身体の一部だから。そう考えると、やっぱりサラダ先輩の非常識は、ただの非常識なのかもしれない。




私の中ではそう結論付けることにした。