君を選んだから

いきなりの重大任務にビビりながら、須賀くんの後を付いて住宅街を歩いて行く。

道中、ご近所さんらしきオバさんに須賀くんが挨拶してたから、笑顔で会釈だけはしておいたけど、これで良かったかな?

私たちがどんな関係に見えるかわからないし、些細なことにもいちいちビクビクしてしまう。


「お前のそういうところ、うちのお母さん、絶対好きだと思う。」

「え?」

「無意識なんだろうけど、挨拶とか礼儀とか、ちゃんとしてるところ。」

「そう?」

「だから、お前なら安心だと思ったんだよね。結構、好き嫌いはっきりしてる人だから。」

「そう、なんだ?」

「大丈夫。自信持っていいよ。」

「.......。」


って、何をどういう風に自信を持てばいいのよ。

それを聞いたら、もう恐怖しかなくなる。


そんな人を上手く騙せるのかな?

須賀くんは普段と変わらず、ニコニコしてるけど、すっごい曲者のお母さんだったらどうしよう.......


妄想が膨らみ、心臓を打つ音が尋常じゃないスピードになったところで、須賀くんが立ち止まった。

凝ったデザインの欧風のポストには、「SUGA」とローマ字で書いてある。

庭でバーべキューができるだけあって、予想通りの大きなお家だ。