君を選んだから

そう言われたら素直に嬉しいし、悪い気はしない。

須賀くんの一番近くにいるのは自分だっていう自覚は何となくあるけど、冷静に考えたら、同じフロアには他の女の子だっているし、この風貌と人当たりの良さだから、彼がモテないはずがない。


ニセとは言え、その中から彼女役に任命された喜びが、身体の中にふつふつと沸き起こり始める。

そうよ、もっと自信を持たなくちゃ!!

せっかく「彼女感が出せる相手」として選んでもらえたんだから。


所詮、一日限りの「ニセ彼女」だろうけど、とにかく今日は一生懸命頑張ろう。

彼のリクエスト通り、何とか任務を全うしよう。

上手くやり遂げれば、彼の中で、私の株がグングン上がって行くかもしれない。


だけど、どうしてそんな役割が必要なのかな。

まさか家族に見栄を張りたいから?

いや、でも、そんなことのためにわざわざここまでしないよね。


第一、そんなに簡単に家族を欺けるもの?

そもそも、須賀くんがその気になれば彼女なんてすぐできるだろうに、そこまでして家族を騙す理由もわからないし。


そういうことするタイプじゃないと思ってたから、ちょっと意外だったな。

片棒担ぐって決めちゃったけど、須賀くん、一体何を企んでるんだろう。