「今、お前の顔見てたら、いろんなこと思い出しちゃった。」

「私も。何か変な気分。」

「ホント? 俺はすげー幸せな気分。お前との思い出はどれも大事だから。」

「でも、もうだいぶ忘れちゃってるでしょ?」

「そんなことないよ。忘れられるはずないじゃん。本気で愛してたんだから。」

「..........。」

「それに、俺の初めてを全部捧げた相手だし。」

「へっ?」

「だって、そうだもん。って、お前もそうじゃん。」

「そ、そうだけどさ。」

「はははは.......いいじゃん。本当のことなんだし。」

「いいけど、それ、此処でいきなり言う? びっくりするじゃん。」

「え、ダメ?」

「ダメ..........って言うか、匡史、変わってないね。マジメな話してたかと思えば、すぐそうやって笑わせようとする。」

「そう?」

「話してると思い出す。」

「そういう感覚って、覚えてるものなの?」

「そりゃそうだよ。毎日、あれだけ笑わされてたんだもん。忘れられるはずがない。」

「あ、ほら。お前もそう思ってんじゃん?」

「え?」

「忘れられるはずがない。」

「あ..........。」


あれ? ホントだ。

こんな細かいところまで、私はちゃんと匡史の見せるいろんな顔を覚えてる。