気に入らないのはそこじゃない。

キャピキャピお姉さんが、何気なく言った一言だ。

「彼女いるとか聞いてない」って、それはどうしてなんですか?


私の知らないうちに、今まで周りにいなかったような年上の人たちと知り合い、匡史の世界が広がっている。

それは悪いことではないと思うし、露骨に嫌がるほど、私だって子供じゃない。

だけど、いきなり今みたいな場面を見せられたら、やっぱり面白くはない。


って言うか、本当は怖くなった。

ただでさえ、これから離れて過ごさなくちゃいけないのに、なんで私の存在を公にしない訳?


何か納得行かない。

こんなつまんないことで不安にさせるなんて最低。

疑いたくはないけど、私の目の届かない所では何してるかわからないとか思っちゃうじゃん..........


匡史は軽く会釈をしながら、お姉さんたちに小さく手を振っている。

何となくデレデレしてるように見えて、イライラが止まらなくなる。


それでも、そこですぐ匡史が謝ってくれれば、気が済んだのかもしれない。

なのに、凹んでるのに気付いてほしくて繋いだ手をギュっと強く握った私に、匡史は軽く微笑んだだけで、何も言ってはくれなかった。

ずっとずっと待ってたのに、その日、バイバイするまで、言い訳すらしなかった。