全部わかってたんだ。本当のこと。

言い訳すらできなかった素直じゃない私を、匡史は誤解したまま、怒ってるんだろうと思ってた。


本心では顔を見たいのに、謝りたいのに、匡史と話し合う勇気を持てず、会えない環境にしてしまったのには私にも責任がある。

なのに、匡史はそれをわかって、そんな風に思っててくれたなんて........


高校三年の冬、匡史は早々と推薦で合格を勝ち取った。

だけど、匡史の行く大学は親戚も多く住む関西で、私の志望校はすべて実家から通える範囲の首都圏。

無事に合格できたとしても、遠距離恋愛になることは確定していた。


だから、少しでも一緒にいたいと思う反面、その気持ちに甘えていたら合格を勝ち取ることができないかもしれない。

私のそんな不安を察してか、ある日、匡史は、しばらくの間、少し距離を置くことを提案して来た。


寂しいけど落ち着いて勉強してもらうためだと言われれば、従うしかない。

入試が終わるまで会うのは学校だけと決め、私は勉強に励み、一方、匡史は初めてのアルバイトを始めた。


一人暮らしにはいろいろとお金もかかるだろうし、私に会えないからってフラフラ遊んでいるのも申し訳ない。

アルバイトを始めたきっかけは、確かそんな理由のはずだった。