会いたくなかった訳じゃないけど、会おうとする勇気がなかった。

他に理由なんてない。

ただそれだけなんだと思う。


今、考えると本当に幼い恋で、互いに素直になれないまま、意地を張ってばかりいた。

それでも好きな気持ちが消えることはなく、くっついたり離れたり。

私の高校三年間は、匡史と共にあった。


あの日も、すぐに追いかければ丸く収まったのかもしれない。

別れたくないとすがりつけば、もっと一緒にいられたのかもしれないし、それを後悔したこともある。


だけど、そうすることができないまま、少しずつ大人になり、時間と距離がゆっくりと恋の記憶を消して行った。

新しい恋をする度、匡史のことを考えなくなったし、二度と会うことはないと決め付けていた。


なのに、今、目の前には匡史がいる。

ネクタイを締め、大人っぼく、カッコ良くなっちゃった匡史が。

そして、狭いエレベーターの中で、まだ戸惑っている私にあの頃と同じ笑顔を向けている。


「ホント、久しぶりだな。」

「うん。」

「すごくキレイになった。」

「えっ? そ、そう?」

「あおいなんだけど、あおいじゃないみたい。何かドキドキする。」

「..........。」


それは私も同じだよ。

だから、そんなに嬉しそうに笑わないで。

愛しそうに見つめないで。


どうしていいかわからなくなる。

会いたくなかった訳じゃないから..........