君を選んだから

名前まで同じなんだから、これはもう確定に決まってる。

信じ難いことに、私の記憶の中に住んでいる「向井くん」と、話し方のクセまで一致してるし。


どうしよう。

そんなに急に心の準備が出来ないよ。

悪い夢でも見てるような気分だ。


逃げる訳にも行かないし、何から話せばいいの?

あいつとは、もう二度と会うことはないと思ってたのに..........


ふと顔を上げれば、新人パートさんの集団が、向井くんがいるらしき方向に向かって一斉にお辞儀をしている。

え? 研修、終了しちゃった?

わっ、わっ、本当にどうしよう!!


緊張がマックスに達して、胸を圧迫する。

助けて。消えたい。

苦しくて、息が上手く出来ないよ........


ただでさえこんな状況なのに、隣に須賀くんがいるとか、もう無理。

好きな人の目の前でこんなことが起こるなんて、ラッキーデーどころか私史上最悪の日じゃん。


パートさんたちが退けて行くのに合わせ、案内役のチーフと須賀くんがゆっくり進んで行く。

私も付いて行かなくちゃダメだよね。

足が進んで行かないよ。


だいたい、あいつはどんな顔をするんだろう。

少しは嬉しそうにしてくれるのかな。

会うのが怖くて、たまらない.........