君を選んだから

だんだんと湧き起こって来る喜びで、頰が勝手に緩んでしまう。

だって、こんな風に他の人の目が届かない所で二人きりになるなんて、入社以来、初めてなんだもん。


何にも起こらないのはわかってるのに、こんなドキドキするなんて.......

ダメ、ダメ、平常心で挑まなきゃ。

須賀くんの心配をする前に、私の方が挙動不振扱いされちゃう。


「今のところ、上手いこと、乗り切れてるみたいだな。」

「うん。バレては無さそう。」

「適当に座って。つっても、ここしか座るとこないか。」

「あ、うん.....。」


二人掛けのソファーが、とてもとても狭く感じる。

ただ隣に座るだけなのに、音が聞こえてるんじゃないかと思うほど、心臓が高鳴っている。


多分、狭い居酒屋とかでなら、過去にもこの位の距離に隣り合わせたことはあったはず。

なのに、シチュエーションが違うだけでこんなにトキメいちゃうものなのかな。


「ちょっと抱いてて。」

「うん。」


手渡されたワンちゃんは、モフモフしたぬいぐるみみたいでカワイイ。

大人しくてイイ子だし、ふわっと温かくて気持ち良いし、須賀くんにずっと抱っこされてたと思えば、羨ましさと同時に愛しさだって倍増だ。