君を選んだから

特製のタレに漬け込んだと思われるお肉はとても香ばしい香りをさせていたけど、すっかり舞い上がっている私には、正直なところ、味がイマイチ伝わって来なかった。

手が込んだ一品だということだけは、何とか雰囲気で判断できたけど。


美味しそうにお肉を頬張る須賀くんは、一見、普段と変わらないように見える。

ってことは、また気のせい?

だったらいいけど、本当にそう?

それとも、それは作ってる顔?

どれが本当かわからないから、気になって、気になって、しょうがない。


部屋に入れてもらえる嬉しさと、何だか様子のおかしい須賀くんを心配する気持ちが戦ってる。

ドキドキなんだけど、モヤモヤ。

だけど、どう探ったらいいのかな。


犬を抱いて階段を上る須賀くんはやっぱり普通に見えるから、ますます悩む。

あぁ、もうわからない。

これは、とりあえず当たって砕けるしかないっていうやつ?


緊張で破裂しそうになりながら通された部屋の中は、想像してたよりもキレイに片付いていた。

全体的に黒っぽい色で統一されていて、いかにも「男の子の部屋」っていう感じだ。


それでいて、よく見ると家具もファブリックもおシャレなデザインだし、ずらっと並んだCDやら、タンスの上に無造作に重ねられたキャップやらに須賀くんらしさが表れている。

私、今、本当に須賀くんの部屋にいるんだ..........