君を選んだから

すると、須賀くんはすぐに私だと気付いたようで、振り向かずに黙ったままで、その手を掴んだ。


なんて言おう。

どうしよう。

謝りたいのに、言葉が出ない。

しばらく話せなかった辛さがこみ上げて、ホっとしたのと一緒になって、涙を溢れさせる。


まだ何も言葉を交わしてないのに、どうしてそんなになっちゃうんだろう。

やっぱり、私、この人が好きなんだ........


「ごめん。いつまでも意地張って。」

「私こそ、ごめん。誤解されるようなことして。」

「自分のタイミングで謝りたくて、それを、上手く探せないまま、こんなに待たせちゃった。本当にゴメン。」

「いいよ、もうやめよう。つまんない意地の張り合いは。須賀くんと話せないのが、こんなに辛いなんて初めて知った。」

「俺もだよ。陽奈さんがいなくなっても平気だったのに、お前と喋れないのは耐え切れなかった。気持ちって、本当に正直なんだな。」

「..........須賀、くん?」


須賀くんはそう言うと、振り向いて優しく微笑んだ。

これは私の大好きな笑顔だ。

これが早く見たかった。


そして、須賀くんは、とても大事そうに私を抱きしめてくれた。

辺りを見ると、まるで空気を読んだかのように、営業所のメンバーは見当たらなかった。