君を選んだから

とは言え、ほんのちょっぴりだけど、後ろめたい気もする。

須賀くんにも何となく言いづらいし........


でも、どうしてそう思うんだろう。

だって、須賀くんから見たら、私なんてただの同僚でしょ?

彼女でも何でもないんだから、引き止める権利もないし、どこに行こうと関係ない。

何なら、いつ、誰と会おうと、文句を言われる筋合いもない。


なのに、こんなに後ろめたいのは、多分、匡史の気持ちを知ってるからだよね。

たとえ元カレであろうと、好意を持たれている相手の家に一人で行くのは、どう考えても良いイメージじゃない。


わかってるけど、やっぱり匡史が気にかかる。

オープン前からどれだけ頑張って来たか、そばで見ていて知っているだけに、身体を壊して弱っているのをどうしても無視できない。


試しに電話をしてみたら、案の定、熱を出して寝込んでるって言うし、ちょっと差し入れするくらいなら、何の問題もないよね。

こういう時、一人暮らしがどれだけ不安かもよくわかる。

あんなに頑張ってたのに、その結果、こんな目に合うなんて可哀そうだもん。


気にするくらいなら黙って行こうと思い、須賀くんには何も言わず、用事があるとゴマかして定時に上がった。

経口補水液と飲み物と、口当たりの良さそうなデザートを買って、匡史のアパートに向かった。